このブログで紹介する株主へのレター(2017年4月)では、アマゾンが大企業病に取りつかれずに、創業時のバイタリティーを維持する為に大切だと考えていることを、4つの項目に整理して、分かり易い例を交えながら解説しています。
彼はもともと自他ともに認める ”オタク (Nerd)”で、物事をとことん考える癖がありますが、そんなジェフ・ベーゾス氏の考えがとても良くまとまっている株主へのレターだと思います。
アマゾンも創業20年目となり、もはやベンチャーとは言えないまでの巨大企業に成長しました。
その大企業アマゾンが、未だに、ベンチャーのような活力を失わず、急速な成長を続けられるのは何故なのか?
日本企業のビジネスマンやエグゼクティブも悩んでいるテーマについて、彼の鋭い洞察が多く綴られていて、参考になることが多いのではないでしょうか?
◇◇◇ Letter to Shareholders ◇◇◇
“Jeff, what does Day 2 look like?”
ジェフ、Day 2とは、どんなものなのでしょうか?
That’s a question I just got at our most recent all-hands meeting. I’ve been reminding people that it’s Day 1 for a couple of decades. I work in an Amazon building named Day 1, and when I moved buildings, I took the name with me. I spend time thinking about this topic.
この質問は、最近の従業員対話会でもらった質問です。 私は、みなさんに、この数十年間、Day 1 であると言い続けてきました。 私は、Day 1 という名前のアマゾンのビルで働いてきましたし、建物を移転したとき、私は、その名前を私と一緒に持ってきました。 このトピックについて考えてみたいと思います。
“Day 2 is stasis. Followed by irrelevance. Followed by excruciating, painful decline. Followed by death. And that is why it is always Day 1.” To be sure, this kind of decline would happen in extreme slow motion. An established company might harvest Day 2 for decades, but the final result would still come.
Day 2 とは、停滞です。 次に、マーケットからのかい離が始まります。次に、苦しく、痛ましい衰退が続きます。 そして死滅です。 だから常に Day1 なのです。 更に言うと、衰退は恐ろしいほど、ゆっくりと進みます。 歴史のある大企業では Day 2 が何十年も続くこともあります。 でも、最後には同じ結果になります。
I’m interested in the question, how do you fend off Day 2? What are the techniques and tactics? How do you keep the vitality of Day 1, even inside a large organization? Such a question can’t have a simple answer. There will be many elements, multiple paths, and many traps.
私は、どうしたら Day 2が避けられるのか、という問いに興味があります。 どういったテクニックや戦術があるのでしょう? たとえ大きな組織であっても、どうしたら Day 1 の活気を維持することができるのでしょう? このような質問に単純な答えはありません。 沢山の要因や、多くの選択肢、そして落とし穴もあります。
I don’t know the whole answer, but I may know bits of it. Here’s a starter pack of essentials for Day 1 defense: customer obsession, a skeptical view of proxies, the eager adoption of external trends, and high-velocity decision making.
完璧な答えは私も持っていませんが、少しなら分かります。 ここで Day 1 の基本的な防御パッケージを紹介しましょう。 ‘カスタマー・オブセッション(病的なまでに顧客に固執する)” “権威主義に懐疑的な視点”、“外部のトレンドに適合しようとする努力”、“超高速の意思決定” です。
True Customer Obsession
(真に病的なまでに顧客に固執する)
===============================
There are many ways to center a business. You can be competitor focused, you can be product focused, you can be technology focused, you can be business model focused, and there are more. But in my view, obsessive customer focus is by far the most protective of Day 1 vitality.
ビジネスへのアプローチは沢山あります。 競争にフォーカスする、プロダクトにフォーカスする、技術にフォーカスする。 ビジネス・モデルにフォーカスする、他にも沢山あります。 でも、私は、病的なほど徹底的に、カスタマーにフォーカスすることが Day 1 のバイタリティーを維持することに最も有効だと思います。
Why? There are many advantages to a customer-centric approach, but here’s the big one: customers are always beautifully, wonderfully dissatisfied, even when they report being happy and business is great. Even when they don’t yet know it, customers want something better, and your desire to delight customers will drive you to invent on their behalf.
何故か? 顧客を中心におくアプローチには沢山の優位点があります。 でも、最大のものは、顧客は常に、美しいほど、すばらしく、不満をもっている、ということです。 たとえ、満足している、とか、貴方は素晴らしい仕事をしている、と調査に答えていてもです。 彼ら自身も知らないうちに、顧客は、何かもっと良いものを欲しているのです。 そして、彼らを喜ばせたいと望むことが、あたらしい発明につながるのです。
No customer ever asked Amazon to create the Prime membership program, but it sure turns out they wanted it, and I could give you many such examples. Staying in Day 1 requires you to experiment patiently, accept failures, plant seeds, protect saplings, and double down when you see customer delight. A customer-obsessed culture best creates the conditions where all of that can happen.
どの顧客もアマゾン・プライム・メンバーシップを作って欲しいと言いませんでした。 でも、欲しがっていたのだという事は明らかになりました。 このような事例はいくらでもあります。 Day 1 に留まる為には、辛抱強く実験をすること、失敗を受け止めること、種まきをすること、実験の土壌を護ること、そして顧客が喜んでいると分かれば、そこに集中的に投資することです。 顧客に固執する文化が、このようなことを可能にする条件を作り出してくれるのです。
Resist Proxies
(権威主義と闘う)
===============================
As companies get larger and more complex, there’s a tendency to manage to proxies. This comes in many shapes and sizes, and it’s dangerous, subtle, and very Day 2.
会社が大きくなって複雑になると、権威に頼る傾向がでてきます。 これは、多様な形や大きさで現れてきます。 危険で、微妙な、Day 2 の兆候です。
A common example is process as proxy. Good process serves you so you can serve customers. But if you’re not watchful, the process can become the thing. This can happen very easily in large organizations. The process becomes the proxy for the result you want. You stop looking at outcomes and just make sure you’re doing the process right. Gulp.
よく現れる形は、プロセスの権威化です。 良いプロセスというのは、みんなが顧客にサービスを提供することに役に立ちます。 でも、よく気を付けないと、プロセス自身が大切になってきます。 これは大組織でよく起こりがちです。プロセス自身が、あなたが求めることになってしまうのです。 その結果がどうなるかを考えなくなり、単にプロセスが正しく行われていることだけに気をつけるようになってしまいます。 何という事でしょう。
It’s not that rare to hear a junior leader defend a bad outcome with something like, “Well, we followed the process.” A more experienced leader will use it as an opportunity to investigate and improve the process. The process is not the thing. It’s always worth asking, do we own the process or does the process own us? In a Day 2 company, you might find it’s the second.
まだ未熟な管理職が、“いや、プロセス通りにやったんだけど”といって、悪い結果を正当化しようとすることは、よくあります。 より経験を積んだ管理職は、そういう機会を、プロセスを検証して改善する機会として使います。 プロセス自身が大切なのではありません。 だから、自分たちがプロセスを作っているのか、プロセスが私たちを束縛しているのか、つねに確認することが大切です。 Day 2 の会社では、後者になることが多いです。
Another example: market research and customer surveys can become proxies for customers – something that’s especially dangerous when you’re inventing and designing products. “Fifty-five percent of beta testers report being satisfied with this feature. That is up from 47% in the first survey.” That’s hard to interpret and could unintentionally mislead.
もう一つの例です。 マーケット・リサーチとか顧客調査自身が、顧客のための権威になってしまう、ということです。これは開発をしていたり、製品のデザインをしている場合、特に危険です。“55%の顧客は、このベータ版に満足しています。 これは最初の47%が満足した最初の調査から改善しています。” これは解釈がとても難しく、意図的に誤った方向にもっていかれる可能性があります。
Good inventors and designers deeply understand their customer. They spend tremendous energy developing that intuition. They study and understand many anecdotes rather than only the averages you’ll find on surveys. They live with the design.
良い開発者やデザイナーは顧客を深く理解しています。 彼らは、自分たちの直観を磨くために恐ろしいほどのエネルギーを使います。 彼らは、調査で得られる平均的な回答だけでなく、沢山の実際の話を研究し理解しようとします。
I’m not against beta testing or surveys. But you, the product or service owner, must understand the customer, have a vision, and love the offering. Then, beta testing and research can help you find your blind spots. A remarkable customer experience starts with heart, intuition, curiosity, play, guts, taste. You won’t find any of it in a survey.
私はベータ・テストや調査に反対しているのではありません。 でも、貴方が、製品やサービスの責任者であるなら、顧客を理解し、ビジョンをもって、提案をとことん好きにならなくてはいけません。 ベータ・テストや調査は、気づかなかった点に、気づきを与えてくれるかもしれません。 素晴らしい顧客の体験は、心、直観、好奇心、ちょっとした遊び、根性や、品性があって、初めて成り立ちます。
Embrace External Trends
(外部のトレンドを大切に受け止める)
===============================
The outside world can push you into Day 2 if you won’t or can’t embrace powerful trends quickly. If you fight them, you’re probably fighting the future. Embrace them and you have a tailwind.
力強いトレンドの変化を素早く受け止めなければ、外部の世界は、貴方を Day 2 に押しやってしまいます。 もし抗えば、貴方は未来と戦っていることになります。 受け止めましょう。 そうすれば、追い風になります。
These big trends are not that hard to spot (they get talked and written about a lot), but they can be strangely hard for large organizations to embrace. We’re in the middle of an obvious one right now: machine learning and artificial intelligence.
大きなトレンドは、見つけるのは難しいことではありません。(多くが語られたり、書かれたりします。) しかし、大きな組織になると、それを受け止めるということが、不思議なほどに難しくなります。 今、私たは、明らかなトレンドの真っただ中にいます。 機械学習とAI(人口知能)です。
Over the past decades computers have broadly automated tasks that programmers could describe with clear rules and algorithms. Modern machine learning techniques now allow us to do the same for tasks where describing the precise rules is much harder.
過去、数十年でコンピュータは、プログラマーが明確にルールとアルゴリズムを規定できる、幅広い分野の仕事を自動化しました。 最近の機械学習の技術は、明確にルールを規定するのが難しい分野で、同じことを起こそうとしています。
At Amazon, we’ve been engaged in the practical application of machine learning for many years now. Some of this work is highly visible: our autonomous Prime Air delivery drones; the Amazon Go convenience store that uses machine vision to eliminate checkout lines; and Alexa,1 our cloud-based AI assistant. (We still struggle to keep Echo in stock, despite our best efforts. A high-quality problem, but a problem. We’re working on it.)
アマゾンでは、今まで、機械学習の実用的アプリケーション開発を進めてきました。 いくつかは、結果が見えやすい状況になってきました。 自動のプライム・空輸ドローン。 アマゾン・ゴー・コンビニエンス・ストアーなどは、レジ待ちラインをなくすために、機械ビジョンを使っています。(まだ、エコーについては、努力しているのにもかかわらず、在庫問題で苦労していますが。とても、高度な品質問題なのですが、問題に変わりません。 今、対処中です。)
But much of what we do with machine learning happens beneath the surface. Machine learning drives our algorithms for demand forecasting, product search ranking, product and deals recommendations, merchandising placements, fraud detection, translations, and much more. Though less visible, much of the impact of machine learning will be of this type – quietly but meaningfully improving core operations.
しかし、ほとんどの、私たちが機械学習に取り組んでいることは、見えないところで進んでいます。 機械学習は、需要予測、製品検索ランキング、おすすめ紹介、仕入発注、詐欺の発見、翻訳、そのた沢山のアルゴリズム開発を進めています。 目で見えたりはしませんが、機械学習の効果はこのような分野で沢山でてきます。 静かに、しかし、実際的に基本的なオペレーションを改善していきます。
Inside AWS, we’re excited to lower the costs and barriers to machine learning and AI so organizations of all sizes can take advantage of these advanced techniques. Using our pre-packaged versions of popular deep learning frameworks running on P2 compute instances (optimized for this workload), customers are already developing powerful systems ranging everywhere from early disease detection to increasing crop yields.
AWS (アマゾン・ウェブ・サービス)では、全ての規模の組織が、このような先進的な機械学習のベネフィットを受けるための、コストとバリアーを引き下げることが出来たので、うれしく思っています。 P2 コンピュータ・インスタンス上で作動する、人気のディープ・ラーニング・フレームワークを、プレ・パッケージしたバージョンを使うことで、顧客は、幅広い分野で、もう既に強力なシステムを作り始めています。 病気の早期段階での発見とか、穀物生産の増加などです。
And we’ve also made Amazon’s higher level services available in a convenient form. Amazon Lex (what’s inside Alexa), Amazon Polly, and Amazon Rekognition remove the heavy lifting from natural language understanding, speech generation, and image analysis. They can be accessed with simple API calls – no machine learning expertise required. Watch this space. Much more to come.
アマゾンのハイ・エンドのサービスも利用可能な形にしています。 Amazon Lex (Alexaの中に入っています。), Amazon Polly, Amazon Rekoginitonは、自然言語の理解、スピーチの作成、イメージ分析を実現しています。 これらは、簡単なAPIを通して活用できるようになります。 機械学習の専門家は不要です。 この分野に注目してください。 どんどん新しいものが出てきます。
◇◇◇ To be continued in the next blog ◇◇◇
次の4つめの項目が、もっとも長い文章で説明されていますので、
アマゾン創業者 ジェフ・ベーゾス「アマゾンが大企業病で消滅しない為に (2)」
に続きます。
0 件のコメント:
コメントを投稿