2018年5月4日金曜日

【比較シリーズ】有名起業家が投資する日米民間ロケット開発会社を比べてみました。

次々と民間ロケットが開発されて打ち上げ試験が繰り返される中、今さら聞けない有名起業家が出資して作った日米のロケット開発会社を徹底的に比較してみました。

(米国)は、

 

イーロン・マスク氏(ベンチャー起業家)が創業したスペースX

 

ジェフ・ベゾス氏が(Amazon創業者:CEO)創業したブルー・オリジン

(日本)からは、

堀江貴文(ホリエモン)氏が創業者として名前を連ねるインタテスラテクノロジズ(北海道)。



規模も追及する技術も違いすぎるって? いえいえ、比較してみないと分かりません。

それでは、1つずつ見てみましょう。
 

いつ設立したの?


Space X

2002

Blue Origin

2000

インタテスラテクノロジズ

2013


【スペースX

2002年にNASAの算を増やすためにイーロン・マスク氏が「火星オアシス計画」のコンセプトをまとめた事がきっかけです。火星に人間が住めるようにする、というこの壮大な計画。 

イーロン・マスク氏はこれを実現するためにロシアからロケットを買い付けようとしましたが、売ってもらえませんでした。 そこで実際に自分で作ると幾らになるのか自分で計算してみたところ、機体などの材料費は実は打ち上げコストの10%にもならないということが分かったようです。

そこで「それなら自分でロケット開発会社を作ってしまえ!」という事になったそうです。ビリオネア(1100億円以上の資産所有者)らしい凄い発想ですし、それで会社を本当に起業してしまうところが凄いところです。

 

【ブルー・オリジン】

会社の設立は古いですが何事も確信が得られるまで秘密主義を徹底するジェフ・ベゾス氏は、ブルー・オリジン社の設立について全くプレスリリースなどもしませんでした。 

ようやく世間が気が付いたのは、2003年「なんだかしきりに土地を買い集めている無名の会社がいくつもある。何かおかしい。」とテキサス州の地元の不動産屋さんが気が付きだしたのがきっかけです。

結局、それはBlue Origin社の開発試験の用地確保の為だったということが判明しました。

そこで、Blue Originとは、どんな会社なのかと皆が調べて、初めて、ジェフ・ベゾス氏が宇宙開発事業に乗り出しているという事が知られるようになりました。その間、ジェフ・ベゾス氏は、複数の宇宙開発の専門家と実現性について検討を重ねていましたが、何にも発表しないところがジェフ・ベゾス氏らしいところです。

 

インタテスラテクノロジズ

“1997年、全国の宇宙好きが集まって、 民間による低価格の衛星打ち上げが可能な最小ロケットの検討がスタートしました。 結果、数十グラムの衛星を軌道投入する打上げ重量数百kgの超小型ロケットのコンセプトに至ったことが現在のロケット開発に繋がっています。 当初は実験設備などなく、メンバーが住むアパートの風呂場で最初のロケットエンジンの燃焼実験を繰り返しました。” -インタテスラテクノロジズ社 HPより-


この会社の前身は「なつのロケット団」という、ロケットの好きな人が集まって本気で宇宙までロケットを飛ばそう、という草の根運動が元になっています。それでも、日本で初めての民間宇宙ロケット開発会社ですから、本当に素晴らしいです。


資本金は?


Space X

   $15 billion (16000億円)

Blue Origin

$ 500 million   (   550億円)

インタテスラテクノロジズ

9,000万円     (   $0.9million)

 

【スペースX

イーロン・マスクは54%の株式を所有しています。 でも、株主としての議決権はマスク氏が78%を有していますので、彼の会社であることは間違いありません。

残りの株式は、Google社(2015年 $1billion:1,100億円投資)とフィデリティ・インベストメント社という投資会社が所有しています。

社員は7,000名で、イーロン・マスク氏はCEO CTOの肩書も有しています。 最初にこれだけの出資をしたのは、競争が激しいNASAからの受託契約を、早期に獲得する事を目指したからです。   

【ブルー・オリジン】 

2017年の資産残高でビル・ゲイツ氏を抜いて世界一の資産家とランクされたジェフ・ベゾス氏が100%出資しています。 ジェフ・ベゾス氏は、子どもの頃から宇宙が大好きで、プリンストン大学での総代としてのスピーチも宇宙の話しかしなかったという位、宇宙が大好きなのです。彼は「自分は人生でアマゾンという宝くじに当たった。 その賞金を宇宙事業に投資して、宇宙事業の初期費用を引き下げることに貢献したい。」と述べています。

そんな世界一の資産家がイーロン・マスク氏より出資が少なくてよいのか?

いえいえ、実際、2017年の11月には、ベゾス氏は$1.1 billion (1,300億円相当)のアマゾンの回部式を売却しました。又、ベゾス氏は「今後も$1.0 billion(約1,100億円相当)のアマゾン社の株式を毎年売却していく可能性がある」と、公に述べていますので、ブルー・オリジンの資本金は、これからもどんどん増えていくのは間違いありません。 社員は。2017年で1,000名です。

ェフ・ベゾス氏は創業者ではありますが、実際の会社運営はBob Smith氏がCEOを務めています。また、ブルー・オリジン社はNASAからの受託プロジェクトを一度も受託していません。 全く、ジェフ・ベゾス氏の個人財産だけで開発を進めている状態です。
 
 
 
インタテスラテクノロジズ


詳細な出資額の内訳は分かりませんが、あの堀江貴文(ホリエモン)氏も出資しているようです。 又、201712月には「北洋イノベーション・ファンド」(北洋銀行・帯広信用金庫)から2,000万円、又、同月に、「ほっかいどう地方創生投資ファンド」(北海道銀行、および道内信用金庫)から約970万円の出資を受けいれています。 
 
堀江さんは、同社の役員という肩書になります。 又、20181月には、地元の萩原建設工業さんが、同社の創業100周年を機会として、インタステラテクノロジズに3,000万円の出資をしています。 事業性というよりも、正に、みんなの善意応援で成り立っている会社ですね。



会社のモットーは?


Space X

” Colonize the Mars! ”

(火星を入植しよう!)

Blue Origin

” Gradatim Ferociter ”

(step by step, ferociously)

一歩ずつ、激しく

インタテスラテクノロジズ

ロケット業界のスーパー・カブ

 

【スペースX

“COLONIZE ”は、「入植する・植民地にする」という意味ですね。 とにかく、「先に行って住み始めた人が全て決める権利を有する」的なニュアンスが強くします。 最初に行った人が独り占めしますよという響きがあって、常に開拓地、フロンティアを求めるアメリカ人の気分を高揚させる言葉なのでしょう。 ところで、イーロン・マスク氏は南アフリカで生まれて育ち、大学時代にアメリカに留学・移住したのですから、ここまで成功すればアメリカン・ドリームに間違いありません。

 

【ブルー・オリジン】

ラテン語の” Gradatim Ferociter ”が正式なモットーです。 一歩ずつ進めていくというのは、よくジェフ・ベゾス氏のアプローチを表しています。

 

インタテスラテクノロジズ

スーパー・カブと言われてもピンとこない人も多いのでは? これですね。 


ホンダのスーパー・カブ。かっこ良いところは発売当初からひとつもないけど、とにかく実用的で耐久性もあり、世界で最も売れたバイクですね。 インタテスラテクノロジズの設立趣旨が、枯れた技術を用いた小型ロケットで超小型衛星を安価に打ち上げる。という事ですから、よく実態を表しているのかもしれません。 しかし、枯れた技術を寄せ集めてロケットを作ると言っても、実際にこれらの技術を統合して1つのロケットにして飛ばすというのは、デザインや強度なども含めて、やはり開発が必要になるんですね。 同社の開発は素人が初歩から1歩ずつ、試行錯誤しながら作っているという手作り感があって、見ていてドキドキするし楽しいですね。

 

 

開発中のロケットは?
 


 

 

高さ

重さ

打上可能積載重量

低軌道

静止軌道

火星

Space X

Falcon 9

70m

 550 t

22.8 t

18.3 t

4 t

Falcon Heavy

70m

1,420 t

63.8 t

26.7 t

16.8 t

Blue Origin

New Shepard

 15m

 

6人以上

行けない

行けない

New Glenn

86m-99m

 

45 t

13 t

行けない

インタテスラテクノロジズ

MOMO

10m

0.9 t

0.02t

行けない

行けない




ようやく、本題に入ってきましたね。 

【スペースX

それでは、同社のホーム・ページから写真を。

 


 
(左がFalcon 9。 右がFalcon Heavy)

全長は70メーター。 だいたい14階建のビルと同じ高さです。 

因みに日本のH-A(写真下:JAXA:三菱重工)が53メーターで、だいたい10階建てですから、その違いは大きいです。 学校の4階分が、10階建のマンションのさらに上に乗っかるイメージですから。



Falcon Heavyは、Falcon 9 ロケットの第1段目ロケットに、更に液体ロケットブースター(横付け補助ロケット)を2本追加しています。低軌道であれば、63.8トンのペイロードの打ち上げが可能。あのスペース・シャトルは、22トン程度でしたから、その3倍の重量の打ち上げが可能です。物凄い打ち上げ能力の向上です。


火星軌道にも16.8トンのペイロードを搬送することが可能ですので、充分に人類が乗って火星に行かれる仕様にはなっています。 流石のイーロン氏も、現時点でそのような計画を打ち上げていませんが。 

 下の写真は、Falconに搭載されるカプセルです。
 
 

【ブルー・オリジン】
ニュー・シェパードは、ジェフ・ベゾス氏も言っているように、人間を低軌道(100km程度)の遊覧飛行に連れて行くのが目的ですので、人間が乗ったカプセルを先頭に搭載しているため、独特の形状をしています。





搭載されるカプセルには6人の乗客の搭乗が可能です。そして、カプセル内のの椅子は、全員が窓を見られるように配置されています。


(カプセル外観)
 
 

 
(カプセル内観)
 



値段が折り合うなら、乗ってみたいですね。 でも、搭乗前には無重力の時の身体の使い方、エチケットや緊急時の対応などのトレーニングを受ける必要があるようです。 まだ、飛行機のように気軽に搭乗するというわけにはいきませんね。 もちろん、まだ、搭乗サービスは開始されていませんが。

ニュー・グレンは、スペースX社のファルコンよりも更に大きくなる予定です。







インタテスラテクノロジズ


「将来、打ち上げるべき衛星のサイズは小さくなる。それを考えれば小型ロケットに需要がある。」という信念に基づいて設計されています。

2011年の「はるいちばん」(100kgf)から徐々にロケットのサイズを大きくする開発が進んでいます。20177月末、初めて100km圏へ向けて「MOMO初号機」試験発射が実施されましたが、成功しませんでした。 想定外の機体の旋回とMAX Qでの機体の耐性不足が確認されました。

2018428日には、これらの問題点を修正した「MOMO2号機」の試験発射が実施予定されていましたが、不具合の発生が発射前に確認された為、ロケットの転嫁前に試験の延期が決定されました。

(一番左が「はるいちばん」。一番右が「MOMO」になります。)


◇打上実績は?
 

(2018.3 第8回 New Shapard 飛行テスト)
 

 
今回は、今までで一番高度の高い、107kmへの飛行と、一度打ち上げて回収したカプセルとブースターを使用しての打上実験となりました。 
 


 
スペースX社のFalconもブルー・オリジン社のNew Shapardも、最大の特徴は、コストを削減する為にロケットのブースターやカプセルの再利用を前提としていることです。 その回収の仕方が素晴らしいですね。 
 
回収というよりも、ブースターなどは、まるで、打上の映像を逆再生しているかのように、ロケット噴射をして減速しながら垂直に下りてきて、文字通り着地します。 70メートルの筒型の高い構造物をしっかりと着地させるのですから、その姿勢制御の技術力の高さには驚かされます。
これで、スペースX社の打上コストは、
 
Falcon 9    :  $62M  (56億円)
Falcon Heavy:   $90M  (81億円)
 
と発表されています。
でも、同社のホーム・ページには、いきなりこうも書かれています。
 


 
Space x offers competitive pricing for its Falcon9 and Falcon Heavy launch services.  Modest discounts are available for contractually committed, multi-launch purchases.”
 

(複数の打上げをご契約いただいたお客様には、
若干の割引をさせて頂きます。)
 
 
ビジネスの基本として、まだ割引の可能性を問い合わせしてもいないのに割引の話をサービス提供側から申し出ている場合、結構な値引きを期待してしまいますが、どうなのでしょうか?

ブルー・オリジンは、ロケットを格納庫から移送し、発射パッドに設置。 燃料給油バルブの取り付けから、実際のコントロール業務まで、全てを30人で行うそうです。
従来なら数百人で行うような発射試験が、たったこれだけの人数で行えるのは驚きです。コスト削減を目指して、この人数で発射できるように機体の設計をしたのだそうです。

 
尚、スペースX社もブルー・オリジン社も、試験発射は勿論、自分の資本金を使います。
いちいち、打ち上げ費用の調達に苦労しなくて良いだけの充分な資本金があります。
(一部では既に実際に荷主の依頼の機材などを搬送することも始めていますが。)

残念ながら、日本のインタテスラテクノロジズ社はMOMO機の2,200万円の試験発射費用をクラウド・ファンディングで調達しました。
 

 

 

 ◇◇◇ おわりに ◇◇◇
 
 
如何でしたでしょうか? やっぱり、規模の違いは大きいですね。
 
最後に日米の人口比較です。
 
アメリカの人口: 3.0 億人(世界第三位)
日本の人口   :  1.1億人(世界第四位)
 
アメリカは国土は広いですが、人口の差は3倍程度です。

人口世界第五位のイギリスは8000万人くらいしかいませんし、日本はそういう意味では大国なのです。 ここまでアメリカと規模の差がつかなくても良い気がします。
ですから、インタテスラテクノロジズには、頑張ってもらいたいですね。 
 
応援しています!!
 
 

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